ある日、ハナが家族と遊びに行くことになった。川原でバーベキューをするようだった。ハナは出掛ける前から喜んでいた。
「ひゅうまは行かないの?」
ハナが自慢気に言った。
「ぼくは誘われても行かないよ。家に居る方がいいや」
ぼくは素っ気無く答えた。そしてぼくは自分の部屋に上がり、窓から出掛ける様子を見ていた。
お父さんの軽トラックにバーベキューの荷物を積み込み、お母さんや他の家族はお兄さんが運転する乗用車に乗った。だけどハナは乗せて貰えなかった。
「さあ、ハナ行くよ」
そう言うとお父さんはハナの散歩紐を引いて軽トラックの荷台に乗せ、散歩紐をトラックに結んだ。お父さんはコロおじさんにもそうしていた。
「えっ、お父さん、私はみんなと一緒じゃないの?」
とハナが尋ねたがお父さんは軽トラックに乗り、車を走らせた。ハナはきょとんとしていた。
コロおじさんはぼくより10年早く家族の一員になり、ぼくが来る前にはお父さんの軽トラックやお母さんのスクーターに乗ってよく出掛けていたらしい。
行き先はお父さんの親戚の畑や川原だったようだ。だけどお母さんが軽い事故を起こしてからスクータには乗せて貰えなくなったらしい。
ぼくが来てからもコロおじさんは軽トラックの荷台に乗って遊びに出掛けことがあったけれど、病院に連れて行かれる姿を見る方が多かった。
夕方になり、家族が帰って来た。ぼくは部屋の外に出た。
「お帰りなさい」
「ひゅうま、ただいま」
お母さんがそう応えてくれた。
ハナは軽トラックの荷台に乗っていたが窮屈そうで、出掛ける時よりも散歩紐がトラックに短く結んであった。ハナはお父さんに降ろされた。
「ハナ、バーベキューはどうだった?」
「バーベキューは楽しかったけれど、もう軽トラックの荷台は嫌よ。私も乗用車が良かった」
ハナは元気がなくうんざりしていた。
「何かあったの?」
「ええ。私がいけないんだけど、途中で荷台から飛び降りちゃったのよ」
「飛び降りた?」
「信号待ちで停まった時に後ろの乗用車から呼ばれて、それでつい嬉しくって」
「それでどうしたの?」
「お父さんは知らないから私が首吊りになったまま走り出してしまって、お兄さんの車や周りの人が騒いでお父さんに知らせて何とか助かったの」
「えっ!首は大丈夫なの?」
「今でも少し痛いわ。首輪が絞まることは散歩中にもあるけど、飛び降りた時には息ができなくて苦しかった」
「バカだなぁ、そんなことしたら死んじゃうよ」
「そうね、バカよね。私もひゅうまと留守番をしていれば良かった」
ぼくたちは笑い合った。それからハナとは仲良くなった。