重篤な意識障害を高齢者が発症する「せん妄」というものがあります。
脳が機能不全を起こすことによって生じる意識障害です。原因は解明されていませんが、高齢者は大きな手術後に発症するケースが多く、麻酔、入院による環境の変化、手術による過度のストレスなどが要因にあるようです。
この「せん妄」は統合失調症や認知症に症状が似ているのですが、違うもので、余り知られていません。私の父は、2度、手術で入院をした際に術後せん妄になりました。これは誰にでも起こり得ることです。
アルコール依存症の方がお酒が切れると暴れるということを聞きますが、こちらは振戦せん妄です。
父の発症の1度目は、膝の手術の後です。
手術翌日の夜から発症しました。点滴を自分で外して家に帰ると暴れ出し、看護師を殴ったそうです。病院から呼び出しがありましたが、私は不在で深夜に妹が病院に向いました。暴れるため、身体拘束をして貰うことになりました。
睡眠障害があり、夜になると被害妄想で大声で叫ぶという症状があり、数週間後に落ち着きました。
2度目は、頚椎の手術の後です。
やはり手術後ですが、1度目が攻撃的だったのに対し、2度目は妄想や幻覚がひどい状態でした。進行した認知症と同じように、家族も分からず記憶も曖昧です。何にも反応をしない、幻覚が見えて怯える、妄想で怒る、を繰り返します。
頚椎の神経を手術したので身体は絶対安静なのですが、動かせないのに動いてしまっていました。このため、術後の回復はよくありませんでした。
1度目と違い、症状は悪くなる一方で、この状態が数ヶ月以上も続きました。
総合病院は入院できる期間が決まっており、リハビリ専門病院に転院し、その病院内の脳神経外科を受診しました。そこで認知症にも使われるアリセプトと抑肝散を処方して貰い、顔付きが穏やかになり、正常な受け答えができるようになり、目に見えて回復して行きました。
それからは、身体を動かすリハビリとせん妄症状の治療を併行して進め、転院から4ヶ月後に退院することができました。
退院後もリハビリや投薬は続いていますが、頚椎を通る神経が切断されたので身体の麻痺が残っています。せん妄によって認知症が進行するという説もあり、意識は正常でも、判断力と理解力が明らかに落ちました。
ただ、退院ができて本当に良かったと思います。