資格マニアではないですが、仕事や趣味の資格や検定を色々と受験しました。
  
 今まで挑んだ資格試験の中で、割と勉強をしたのは、情報処理関係の資格です。論文が鬼門なので、コツコツとマジメに対策をし、高度情報処理の資格を2種類取れました。他に、法科大学院が密かなブームの頃、司法試験に挑戦しようと思った時期もありましたが、これは仕事との両立が難しく、勉強の途中で止めました。
  
 趣味の資格では、ウインドサーフィンの2級やスキーの1級を持っています。スキーの1級は、合格するまで何回スキー場に出かけて受験し、1点が足りずに何回落ちたか分かりません。電車の中で揺さぶられながらターンのイメトレをしました。
  
 そうした受験を経験した中で、最も勉強と試験対策をしたのは、小学校の教員を目指していた時期でした。
  
 私は仕事をしながら、通信制大学に籍を置いてレポートを書きつつ、その一方で、9月1週目に行われる認定試験の第一次試験の準備を進めました。
  
 この準備期間は約3ケ月でした。
  
 準備と言っても、文庫版サイズの問題集と参考書を買って、朝と夜の通勤時間にひたすら読むというものでした。私は遠距離通勤なので、往復3時間近くは勉強することができました。
  
 この制度は今も続いていますが、一部の見直しがあったものの試験自体は同じような形式で続いています。
  
 当時の試験概要は、以下の通りです。
  
1.1次試験:9月1週の週末2日間
(1)一般教養:筆記、択一式・・・高専卒、短大卒、大学卒、大学院卒は免除
(2)教職に関する科目Ⅰ:筆記、択一式・・・教育原理、教育心理学、指導等
(3)教職に関する科目Ⅱ:筆記、択一式・・・9教科から6教科を選択
  
2.2次試験:10月中旬の週末2日間
(1)教科に関する科目:筆記、論述式・・・9教科から1教科を選択
(2)教職に関する科目Ⅲ:実技試験・・・音楽、図画工作、体育から2教科を選択
(3)口述試験:面接試験
  
3.指導の実践に関する試験:11月中旬~下旬
 授業観察、指導案作成、討論等
  
4.合格基準
 各試験とも6割以上・・・複数教科がある場合は平均で6割以上
  
5.試験会場
 東京学芸大、横浜国大、静岡大学、岡山大学、熊本大学
  
6.最終合格倍率
 受験者の約10~13%程度が合格
  
  
 まず、私は東京学芸大を受験校に選びました。
  
 気持ちとしては合格したらラッキー、落ちたら通信で数年を掛けて単位を取って、資格を取れるメドが立ったら仕事を休職して教育実習を受ける覚悟でした。
  
大学卒なので一般教養は免除されましたが、教職に関する科目Ⅰは非常に厄介です。全く予備知識がありません。
  
 教育原理、教育心理学、指導方法等は、ゼロからなので、通信制大学のレポートを書くことで基礎を学び、文庫版サイズの過去問集で勉強しました。
  
 そして9教科から6教科の選択では、暗記科目を選びました。これは全教科が網羅されている文庫版サイズの参考書と問題集があり、それだけをひたすら通勤時間に読みました。問題を解くというより、「読む」です。
  
 なぜなら、選抜試験ではなく、6割を取れば良いからです。参考書や問題集に書かれていないことが出題されたら、その問題は捨てるという割り切りです。
  
  
 で、・・・1次の試験日になりました。
  
 一日目
  
 教職に関する科目Ⅰ、微妙、ボーダーギリギリの手ごたえです。
 教職に関する科目Ⅱ、1教科目の国語はパス、2教科目の社会は大ポカです。
   
 前半の問題に時間を取り過ぎて、後半は時間が足りず、マークをするだけになってしまいました。
   
 社会を終わって昼食時間となりましたが、引き摺りました。
 ただ、午後最初の算数をパスしたので、気持ちの切り替えができました。
 理科はまずまず、図工はヨシッ!!
  
 二日目
  
 体育はまあまあ、音楽はパス、家庭は勉強してないよ、生活はまずまず
  
 社会の失敗を他の教科で補えるか否かで合否は決まると思いました。
  
 その日、午後から雲行きが怪しくなり、学芸大の門を出たころで雨が降り出しました。そして、歩いている内に信じられないようなゲリラ豪雨に見舞われました。折り畳みの傘など全く役に立ちません。下着までビショビショになりました。
  
 国分寺駅で中央線に乗り、しずくがボタボタと床に垂れ落ちます。
  
 これは落ちたな、という気分でした。
  
 帰宅後、自己採点をしましたが6割を取れているか否か微妙でした。
  
  
 しばらくして、結果の連絡がありました。
  
 なんと、3ケ月の準備で1次合格でした。
  
   
 正直、通っているか否か半々なので、ダメでも仕方がないと思っていました。不合格なら来年は再挑戦しないつもりでしたが、2次不合格でも翌年に限り1次免除です。
  
 このため、通信制大学での単位取得に向けた勉強の優先度を落としました。ただ、2次試験まで1ケ月もないため、できることは限られています。
  
 教科の選択は、
 論述が生活、実技は体育と図工にしました。この選択が実は命取りでした。
  
 作文は得意だったので、論述対策では参考文献を可能な限り調べて読みました。そして実技は図工や美術は得意だったので特にしませんでした。そして、体育は、鉄棒、バスケ、サッカー、マット運動が行われます。
  
 公園の鉄棒にぶら下がったら、前方支持回転(空中前回り)ができません。
 サッカーのリフティングは2,3回しかできず、10回できて満点のようなので最低6回は必要です。バスケは確実にシュートを決める必要がありますがイマイチです。
  
 スポーツはできる方だと思っていましたが、40歳を過ぎた自分には甘かったです。これでは確実に体育で落ちる、と思いました。 
  
  
 次の週末、試験で使うサイズのサッカーとバスケットのボールを購入し、バスケはゴールも購入しました。そして、ホームセンターに行き、ステンレスパイプと角材を購入し、鉄棒を自作しました。そうです。試験対策で庭に練習場を作りました。なりふりなんて構ってられません。
   
 それから毎晩、会社から帰ったら照明で庭を照らして特訓です。
  
  
 試験当日、それなりに手ごたえがありました。
 論述はそれなりに書けたし、図工は「自分の手を描く」がお題でしたが、割とキレイに描けました。
 体育もサッカーのリフティングは10回できたし、鉄棒も練習した甲斐があって全部できたし、バスケもシュートは決まりました。一方で、マットは身体が硬くてぎこちなく、陸上のハードルもタイムがギリギリでした。
  
 いけるかな?と思いました。
  
  
 が、2次試験の結果は不合格でした。
  
 ただ、来年は合格できるのでは、と思いました。このため、通信制の大学で単位を取るよりも、如何にして認定試験を合格するかに勉強を絞りました。
  
 翌春、試験結果の成績開示を受けました。
  
<1次>
 教職Ⅰ:60点・・・ギリギリです
 教職Ⅱ:社会30、理科65、図工90、体育70、家庭55、生活75=計385点
  
<2次>
 論述(生活):60点・・・ギリギリです
 実技:図工40、体育68点・・・はっ??鉛筆淡彩画で40点????
 口述:A(合格)
  
 小学校から高校まで図工も美術もずっと成績は良かったです。絵は得意だと思っていました。完全に舐めていました。私の絵は試験で求められている絵ではなかったようです。私は成績開示を受けるまで、実技ではなく、論述試験の方で落ちていると思い込んでいました。
  
 次回合格するには、実技対策が不可避です。ただ、成績開示で自分の実力が分かってから試験本番までは半年以上の対策期間があります。科目を音楽に変えるのか、それとも図工の基礎をやり直すのか。次回は2度目の認定試験に挑戦します。

 

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