「泣いているのか?ユウヤ」
ハルトが訊ねた。
「泣いてねぇ、泣いてねぇよ・・・。バカ野郎」
ユウヤはそう言いながら顔を腕で拭いていた。
『ほれ!せっかく来たんだ、ワシも乗せんか』
長老猿がヒマリを見上げてそう言った。
会場が微妙な雰囲気になり掛けていた頃、森ではオコジョの子と長老猿が表彰式の様子を見ていた。
「どうするんだ?このままにして置くのか?」
長老猿がオコジョの子に訊ねた。
「二人とも優勝おめでとう!特にヒマリ君、まさかのトリプルコーク、ビックリだったよ。あれは間違いなく公式戦を含めて大会一番のジャンプだった」
MCのケータさんがヒマリにそう話し掛け、多くの拍手と同意の声が寄せられた。
『ヒマリが飛んだ!あんなに激しく落ちて、もう飛べないと思ったのに』
オコジョの子が言った。
「見せてあげるよ、最高の景色を!」
ヒマリはそう言って、ビックキッカーに向かってスタートを切った。
「冗談ばっかりでもないよ。ハートは2個分だし」
ヒマリはすました顔をした。
「どうしてあんなジャンプになったんだ?」
ユウヤが歩きながら訊ねた。
着地エリアの端からヒマリのジャンプを見ていたユウヤとハルトは、急いでヒマリに駆け寄って行った。
ヒマリは、スロープ状のランディングゾーンと呼ばれる部分から1m以上も越えて着地し、衝撃で転がって気を失っていた。そして夢を見ていた。