「見せてあげるよ、最高の景色を!」
ヒマリはそう言って、ビックキッカーに向かってスタートを切った。
ヒマリのスキーはスピードに乗ってハルトのようなキレイなカービングを描き、そして大きく飛んだ。ヒマリの身体は空高く舞い、宙を3回転しながら捻りを4回転して、今度はスロープになっているランディングゾーンにきっちり合わせて軽々と着地した。
その光景を目の当たりにして、会場全体がドライアイスを容器ごと上から被せられたように一瞬で固まった。ただ一人を除いて。
「ヒマリくん!最高だったよ!!」
ツキハが上の方から大きな声を上げ、ヒマリに向かって手を振った。
「すみません。魅入ってしまいました。なんと言うことでしょう!ここでまさかのトリプルコーク1440!!もうビックリを飛び越して本当に信じられないです」
沈黙したアナウンスが興奮気味に再開した。
そのアナウンスを聞いて、静まっていた会場が一斉に沸いた。ヒマリの母親はツキハと抱き合って喜んだ。
森ではオコジョの子と長老猿がヒマリのジャンプをしっかりと見ていた。
つづく