「冗談ばっかりでもないよ。ハートは2個分だし」
ヒマリはすました顔をした。
「確かにな」
ユウヤが応えた。
「なあ、ビンディングの解放値、あの飛び方にしては緩くないか?」
ハルトがスキーを見ながら二人に言った。
「すまない。解放値の調整まで頭が回っていなかった。ヒマリのスキーは全部借り物なんだ。ヒマリ、今回が初めてのスキーで」
ユウヤがハルトに答えた。
「誰がそんなこと信じるか。しかし調整なら俺がしてやる。コイツのジャンプ、もっと見たいしな」
「サンキュー。頼むよ」
ユウヤがハルトに応えた。
「ヒマリ、予選の時の景色、もう一度見せてくれ!何が見えたか忘れちまったから」
ハルトはヒマリをしっかりと見た。
「そうだな。ヒマリ、みんなに見たことのない景色、見せてやれ!」
ユウヤもヒマリに強く言った。
会場にアナウンスが流れる。
「ジュニア男子の最後はヒマリ選手、1本目は激しい転倒でハラハラでした。2本目は気持ちを切り替えられるか。・・・えっ、ビックですか?なんと2本目はミドルキッカーからビックキッカーに変更して飛ぶようです。大丈夫でしょうか?」
つづく