ヒマリは、スロープ状のランディングゾーンと呼ばれる部分から1m以上も越えて着地し、衝撃で転がって気を失っていた。そして夢を見ていた。
「マリ・・・マリ」
そう呼ぶ声がする。
目を開けると、目の前に笑顔の自分が立っている。そして自分はヒマリではなく子猫のマリだった。
「マリのお陰でボクはまだ生きていられる。事故の時、庇ってくれてありがとう。逃げようと思えば自分だけ逃げられたのに、マリはボクを助けようと車に向かって行ったよね」
そう言ってヒマリはマリを抱き上げた。
「ユウヤがいる時、こうやってボクが抱こうとするとマリは直ぐに逃げ出したね。マリはユウヤに甘えてばかりだった。ユウヤが大好きなんだね。だからさっきは不安だったんだね」
ヒマリはマリの頭を撫でた。
「いつも任せきりにしてごめんね。今までマリに遠慮をしていたけど、これからは一緒に考えて、一緒に悩むよ。そして一緒に精一杯生きよう」
ヒマリはマリを見つめてそう言った。
マリもヒマリを見つめ返し、安心したかのように再び目を閉じた。
つづく