ミドルキッカーのスタート位置に立ったヒマリは、何も考えられず、ただ遠くへ飛びたかった。
ヒマリがスタートをした。
お昼休みに手入れをしたWAXが合っているのか、ヒマリのスキーは予選よりもスピードに乗っている。そして小さい身体から大きく踏み切った。そして宙返りも横軸に捻った回転もなく、ただ高く遠くに飛んだ。何も考えず、真っ直ぐに泣きながら飛んでいた。
「あいつ、何やってるんだ!」
ユウヤは高く上がったヒマリを見て叫んだ。
「あれでは完全にオーバーだ!」
隣にいるハルトもそう叫ぶ。
着地エリアは、着地自体をする部分と、着地をしてから安全に止まるまで滑走する部分に分かれている。着地自体をする部分は衝撃を逃がすためにスロープ状になっていて、キッカーの大きさに応じて長さや角度が異なっている。一方、滑走する部分は平らになっていた。
つづく