「こら。これじゃ帰れないよ。それとも本当にウチに来たいのか?」
ユウヤがそう訊ねるとマリは鳴いて応えた。
「それなら、今度暖かい日に連れて行ってやるよ。そして太っちょのクロベエを紹介してやる。だから今日はヒマリの方に行きな」
ユウヤがそう言うとマリは渋々と従った。
「えっ!今度ってどういうこと?連れて行って、そのままマリを返さない気じゃないよね?」
ヒマリは顔をぷーっと膨らませた。
「それはマリ次第かな?」
ユウヤが意地悪く言った。
「ひど~い!」
ヒマリは笑った。
ユウヤも笑った。
そしてヒマリはマリを抱いてユウヤを途中まで見送ることになった。
道路は雪で覆われ、動けなくなった車が放置されている。そんな雪道をユウヤは慣れた様子で渡って行った。
「またな!ヒマリ、マリ」
ユウヤは道の向こう側に着き、大きな声でそう言って手を振った。
マリはユウヤの姿をもっと見ていたかった。そしてユウヤを追い掛けようとして抱かれているヒマリの胸元で暴れた。
つづく