会場に決勝開始を告げるアナウンスが流れる。
「さあ、ジュニア男子はユウヤ選手からです。予選では2本目にスプレッドイーグルからコザックの連続技で63点を出しています。決勝はどうでしょう。さあ、スタートしました」
ユウヤはキレイな弧のカービングから踏み切り、横軸で1回転の360をして着地した。カービングのコツを掴んだユウヤはお昼休みにハルトたちと回転技の練習をしたようだった。
ただ、今のヒマリにはユウヤがどんな技をしようと関係なかった。ヒマリはユウヤに突き放されたことで心が一杯になっていた。
『ユウヤ、ボクの半分はマリだよ。いつもユウヤに甘えていたマリだよ。一緒に居られるだけでいいのに、置いて行かないでよ。そんなのボクはイヤだ!』
ヒマリは心の中で叫んでいた。
次はミコトの番だった。ヒマリはミコトがスタートを切っても見ていなかった。
ヒマリは、子猫のマリが交通事故に遭う直前にユウヤに抱かれていた日のことをマリの記憶として思い出した。
つづく