オコジョが棲む森の中のゲレンデは、大会で使うキッカーのあるゲレンデの横にあった。ヒマリとツキハはスキーで滑りながら森の中の大木まで進んで行った。ゲレンデでは他のスキーヤーやスノーボーダーも滑走していたが、それほど多くなかった。
二人は大木の傍の小さな鳥居の近くで止まった。
『ねえ、話しがあるんだ。お願いだから出て来て』
ヒマリはオコジョの子を呼んだ。
『こっちへ来い』
という声がヒマリに届いた。
ヒマリはツキハを連れて声がする方に進み、途中でスキーを外して木々が密集する中を歩いて行った。すると木々が激しく揺れた。
『どうして他の人間がいるんだ!』
厳しく怒った声がヒマリに届いた。
『ツキハって言うんだ。味方だよ。彼女も森を守りたいと思っているし、他の人も紹介してくれたんだ。ウソじゃないよ』
すると木々の揺れが収まり、長老猿とオコジョの子が姿を見せた。
つづく