スタートエリアに向かうリフトにユウヤとハルトが二人並んで黙ったまま座っている。沈黙がずっと続いていた。
「さっきはカービングの抜けが悪い」
ハルトからユウヤに話し掛けた。
「は?」
ユウヤがぶっきら棒に聞き返した。
「だからさっきのジャンプはカービングの抜けが悪いと言っている。スピンもしないのにカービングでキッカーに入って、直前になって無理に踏み切っている。スピンをしないなら直滑降の方が安定する」
ハルトが少し強い口調で言い直した。
「分かってる。あんな選手紹介されるから調子が狂うんだ」
ユウヤは怒り気味に応えた。
「母親は好きじゃないのか?別に照れなくていいぞ」
「照れてねーし。だけど、カービングでスピードコントロールした方がカッコイイじゃん。失敗したら意味ないけど」
ユウヤの声は段々とトーンが落ちて行った。
「それは分かる。俺も直滑降でプルークを挟んでスピードコントロールをするのは絶対嫌だ。カービングターンでスピード調整する方が自由で好きだ」
ハルトは淡々とした口調で同意した。
「でも、オレには難しいな」
ユウヤは遠くを見ながら小さく応えた。
つづく