スタートエリアでは、ハルトがヒマリを食い入るように見ていた。
「あいつ、イイヤツだな。マグロが好きなのか」
とジャンプより好きな食べ物に感心していた。
「気が合いそうだね」
隣りにいるミコトが応えた。
「ああ。魚好きに悪いヤツはいない」
ハルトは自信を持って断言した。
次はユウヤの番だった。下にいる体操教室の女子からは黄色い声援がスタート位置まで届くように送られている。
「続いてユウヤ選手。好きな食べ物はママのハート印のオムライス、大好きなものは美人でお姉さんに見えるママ、ですか。お母さんが大好きなんですね。いいことです」
アナウンスを聞き、盛り上がっていた会場の一角が微妙な雰囲気になった。
「あのバカ親、ふざけんな!」
と吐き捨ててユウヤがスタートした。
「ユウヤ選手、スタートして大きな緩い弧を描いてカービングをしてのー、おおっと踏み切りをミスしたー。スプレッドイーグルー。惜しいー」
ユウヤは踏み切りをするタイミングが少し早くなり、飛び出した後で失速してバランスを崩した。このためジャンプ後に両足を広げるスプレッドイーグルから、身体を折り曲げるコザックという連続技に繋げることができなかった。
つづく