「それ、大丈夫じゃねーから!体操教室の笑い者だから。ウチの親、絶対ウケ狙いで書くから」
ユウヤは困惑しながらキッカー横の観戦エリアの方を睨んだ。
「ねえ、ヒマリくん、オコジョって応援に来ているのかな?」
ツキハが訊ねた。
「うん。さっき、がんばれって声が聞こえたから、どこかで隠れて見ているよ」
オコジョの声は風に乗ってヒマリに届いていた。
「そっか、じゃあ、がんばらないとね」
ツキハが応えた。
ツキハが係員に呼ばれ、ミドルキッカーのスタート位置に向かった。選手紹介がアナウンスされる。
「ジュニア女子の最後はツキハ選手です。好きな食べ物は、お父さんのピザ。彼女は本当にお父さん思いなんですよ。いやー泣かせますねー。好きなものは、猫。因みに私も猫派ですね。それではスタートです」
ツキハがスタートする。
「ツキハ選手、直滑降でキッカーに向かって、飛んだー!・・・540テールグラブ!!着地も安定して実にエレガントでキレイですねー。・・・そして得点は、72点!僅差で女子のトップです」
飛び終えたツキハは、ゲレンデの上に向かって大きく手を振って喜んだ。
つづく