ヒマリは、大会で使うキッカーの方に向かって行く動物たちを止めたかった。ツキノワグマやイノシシが暴れたら、ジャンプなどできる状態ではなくなってしまう。それに人間と山の動物たちが対立するようなことを、ヒマリはさせたくなかった。
ヒマリはツキノワグマが歩く先に回り込み、聳えるような相手の前に立ち塞がった。子猫のヒマリは勇敢だった。
『止めて!』
ヒマリが叫んだ。
『なんだい?んっ、子猫じゃないか』
ツキノワグマの肩に乗った長老猿が見下ろしながら言った。
『今は猫の姿だけど、本当は人間です。でも、敵ではないです。お願いですから、人間を困らせるようなことはしないでください』
『猫に化けた人間?猫憑きか?しかし、よそ者が何を言っているんだ?』
『人間が困るようなことをしたら、どんどん人間に嫌われてしまう!』
『嫌われたって構うことはない。人間を追い出すのが目的だからな!』
『そうだ、そうだ!』
後ろに続く動物たちも長老猿に同意だった。
つづく