その人間には、大きいか小さいかの違いは分かっても、カヤネズミが悪さをしない準絶滅危惧種の小動物という知識などなかった。そして何の躊躇いもなく、全て殺鼠剤で殺され、ゴミ袋に放り込まれて捨てられてしまった。
『ゴミ扱いかよ。酷いことをするなぁ』
茶トラの猫が言った。
ヒマリは言葉も出なかった。
家に帰ってもヒマリは待っていた子ネズミに何も言えなかった。すると茶トラの猫がいつものように調子良く姿を見せ、飼育ケースに顔を近付けた。
『お~い。今日、お前が言っていたススキがある場所をやっと見つけたんだ。でも、人間が公園にしてしまって、もうススキはなくなっていたよ。だからお前の家族にも会えなかった。でも、お前の家族のことを知っているカラスに会ったよ。もっと良い別の場所を探しに、家族みんなで旅に出たみたいだよ。お前も元気になって、いつか会えるといいな』
茶トラの猫は笑顔でウソをついた。
『ありがとう。そうか、旅に出ちゃったのか。いつか探してきっと会うよ!』
子ネズミは茶トラの猫に明るく応えた。
ヒマリは笑顔を作ってお調子者でウソつきの茶トラの猫の頭を撫でた。
つづく