6.1 棲み処を失ったカヤネズミの家族 ⑤

『うん。大体の方角は分かる』

 そう言って子ネズミは歩き出そうとしたが、上手く歩けなかった。

 

『あらあら、可哀そうに。足の骨が折れちゃっているね』

 老猫が子ネズミの足の怪我に気付いた。

 

『あれ~、手加減したつもりだったんだけど、捕まえた時にちょっと深く噛んじゃったのかなぁ~』

 と茶トラの猫がそっぽを向いて惚けた。

 

『ボクはキミたちの声が分かるんだ。だからボクが家族の所に行って、キミのことを伝えるよ』

 ヒマリが笑顔で子ネズミに提案した。

 

『本当か!頼むよ』

 子ネズミは嬉しそうだった。

 

 そのカヤネズミの子どもは、干し草が敷き詰められた昆虫用のケースに入れられ、足の怪我が治るまでヒマリが面倒を見ることで、ヒマリの家で保護されることになった。

 

 

 ヒマリは茶トラの猫と一緒に、子ネズミから聞いた方角を頼りにススキが茂る場所を探した。吠えられながら犬に聞いたり、スズメに聞いたり、ミツバチにも聞いたが分からなかった。

 そして1週間ぐらい経ってから1年前にできたばかりの公園に辿り着いた。

 

 

  つづく

 

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