『うん。大体の方角は分かる』
そう言って子ネズミは歩き出そうとしたが、上手く歩けなかった。
『あらあら、可哀そうに。足の骨が折れちゃっているね』
老猫が子ネズミの足の怪我に気付いた。
『あれ~、手加減したつもりだったんだけど、捕まえた時にちょっと深く噛んじゃったのかなぁ~』
と茶トラの猫がそっぽを向いて惚けた。
『ボクはキミたちの声が分かるんだ。だからボクが家族の所に行って、キミのことを伝えるよ』
ヒマリが笑顔で子ネズミに提案した。
『本当か!頼むよ』
子ネズミは嬉しそうだった。
そのカヤネズミの子どもは、干し草が敷き詰められた昆虫用のケースに入れられ、足の怪我が治るまでヒマリが面倒を見ることで、ヒマリの家で保護されることになった。
ヒマリは茶トラの猫と一緒に、子ネズミから聞いた方角を頼りにススキが茂る場所を探した。吠えられながら犬に聞いたり、スズメに聞いたり、ミツバチにも聞いたが分からなかった。
そして1週間ぐらい経ってから1年前にできたばかりの公園に辿り着いた。
つづく