『お前が怖くて喋れなかっただけだ』
子ネズミは怒っていた。
『この家に逃げて来たの?』
ヒマリが優しく訊ねた。
『違うよ!ススキが沢山生えている場所があるからって、みんなで引っ越す途中だったんだ。それなのに、この猫に追い掛けられて捕まっちゃったんだ。いつ食べられてしまうのかと、ずっと怖かったよ!!』
子ネズミは泣きながら抗議した。
『それは酷いね。トラ、謝りな!』
ヒマリが茶トラの猫にキツク言った。
『なんで猫がネズミに謝んなきゃいけないのさ』
茶トラの猫は反発した。
『そのカヤネズミは悪さをする家ネズミではないよ。お前の遊びたい気持ちも分かるが、大きなお前はその子ネズミにとっては恐怖そのものだったろうよ』
と老猫が諭した。
『はいはい。ごめんなさい』
茶トラの猫は不満そうな態度で渋々謝った。
『逃がしてあげようよ。他の家族が行った場所は分かるかい?』
ヒマリがそう言った。
つづく