事故が起こり、ヒマリは車道から深く雪が積もった歩道側に仰向きで倒れ、気を失っていた。そのヒマリが倒れた場所から少し離れた植え込みの雪の上に、子猫のマリが血を吐いて倒れていた。
ヒマリは近くの消防署の分署から駆け付けた救急車に乗せられ、病院に緊急搬送された。子猫のマリの方は、植え込みに積もった雪に埋まったままだった。
雪に埋もれた子猫を見つけたのは駆け付けたヒマリの祖父だった。彼は子猫のマリをそっと抱え、雪の中を歩いて動物病院に連れて行った。
ヒマリの祖父は動物病院の院長から、子猫は内臓が痛んでいるので延命ができても回復は難しく、安楽死を検討してはどうかと提案された。しかしヒマリの祖父は安楽死を認めず、入院して痛み止めと延命の点滴を打つことになった。
小さな飼育ケースの中で、チューブに繋がれたマリが苦しそうにしている。それをヒマリの祖父がずっと見ていた。ヒマリの祖父は、マリにとっては怖い存在ではなく、優しい庇護者だった。
「マリ、可哀そうに。ヒマリと一緒にお前まで事故に遭うなんて。
つづく