縁側に面する障子が開かれ、白い子猫が入って来た。白い子猫は人に懐かず臆病だった。ふわふわの毛を逆立て気味にして、その場で固まってしまった。白黒の老猫は完全に無視していたが、茶トラの猫がお構いなしに近付いて来る。
茶トラの猫は、子猫の周りをウロウロしながら、ピンク色の小さな鼻をピクピクさせて子猫の臭いを嗅いでいた。そして白黒の老猫に向かって何か呼び掛けた。すると白黒の老猫も白い子猫の近くにゆっくりと歩み寄って来た。
白い子猫は警戒して唸り声を上げて威嚇した。老猫は怖がりもせずに傍に来ると子猫の身体に鼻を付けた。子猫は固まったままで老猫に身体を嗅がれても何もできなかった。
やがて老猫が子猫の身体を舐め始め、子猫もようやく警戒を解いた。二匹は鳴き合い、子猫は老猫の身体に頭を押し付けた。
白い子猫は、ペルシャが少し掛かった雑種のメスで、白黒の猫の曾孫だった。
その家には、三世代の人間が暮らしていて、男の子と女の子も居た。男の子の名はヒマリで生まれながら左耳と心臓に障害を持っていた。そしてメスの白い子猫はマリと名付けられた。
つづく