バントラックが街から外れた場所にある保健所に到着し、荷室のドアが開いた。
荷室から犬が入った檻が降ろされ、猫は柵の中で網を被せられ、柵から出されて檻に入れられた。三毛猫にも網が被されそうになったが、上手く避し続け、何とか外に逃げ出そうと機会を窺っていた。
その時、大きな黒茶のオス猫が網を持った人間に飛び掛かり、手袋の上から人間の手に噛み付いた。
『お前さんの執念、気に入ったよ。行きな!』
激しく暴れながら黒茶のオス猫が三毛猫に言った。
『ありがとう』
三毛猫はそう言って隙を付いて柵から飛び出した。
後ろから人間が追って来るので振り返れなかったが「このヤロー!」と言う人間の声と、何度も黒茶の猫が叩かれる音が後ろから聞こえた。
『ごめんなさい』
と泣きながら三毛猫は走り続けた。
どこに居るのか分からなかったが、本能的に自分の家がある方角は分かった。しかし捨てられた三毛猫に帰る場所などなかった。
宛てもなく街外れの道を歩いていると神主のいない小さな神社を見つけ、その境内の中に入って行った。そして社の床下に潜り込み、しばらく棲み処にさせて貰うことにした。
つづく