『ここはどこなの?どこに連れて行かれるの?』
三毛猫は近くにいた大きな黒茶のオス猫に尋ねた。
『眠らされていたようだね。ここは保健所に向かう車の中さ』
その黒茶のオス猫は静かに答えた。
『保健所?』
『お前さんは知らないのかい?』
『何を?』
『お前さんも人間に捨てられたんだよ。ここに居るみんな、これから保健所に連れて行かれ、しばらくしたらガス室に入れられて殺されるんだ』
その猫は諦め切ったような口ぶりで静かに話した。
『いやだよ!』
『お願い、家に帰して!!』
『死にたくないよー』
そんな沢山の声が響いていた。
『幾ら騒いだって、今更どうにもなりやしないのさっ』
そんな様子を見ながら黒茶のオス猫は落ち着いた素振りで呟いた。
三毛猫は病気になった自分は、人間に捨てられたのだと理解した。生まれたばかりの子猫を川に捨てていたような人間なのだから、治らない病気に罹った自分を捨てるのも十分にやりそうなことだ。
しかし、悔しかった。
『わたしは決して許さない!このままじゃ死ねない』
三毛猫の目が鋭く光った。
つづく