5.2 捨てられた猫の丑の刻参り ④

『ここはどこなの?どこに連れて行かれるの?』

 三毛猫は近くにいた大きな黒茶のオス猫に尋ねた。

 

『眠らされていたようだね。ここは保健所に向かう車の中さ』

 その黒茶のオス猫は静かに答えた。

 

『保健所?』

 

『お前さんは知らないのかい?』

 

『何を?』

 

『お前さんも人間に捨てられたんだよ。ここに居るみんな、これから保健所に連れて行かれ、しばらくしたらガス室に入れられて殺されるんだ』

 その猫は諦め切ったような口ぶりで静かに話した。

 

『いやだよ!』

『お願い、家に帰して!!』

『死にたくないよー』

 そんな沢山の声が響いていた。

 

『幾ら騒いだって、今更どうにもなりやしないのさっ』

 そんな様子を見ながら黒茶のオス猫は落ち着いた素振りで呟いた。

 

 三毛猫は病気になった自分は、人間に捨てられたのだと理解した。生まれたばかりの子猫を川に捨てていたような人間なのだから、治らない病気に罹った自分を捨てるのも十分にやりそうなことだ。

 

 しかし、悔しかった。

 

『わたしは決して許さない!このままじゃ死ねない』

 三毛猫の目が鋭く光った。 

 

 

  つづく

 

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