『最後の最後まで残っていた真っ白い子、お母さん覚えている?』
そう言って、白黒の猫も母猫に重なるように丸くなった。
『あぁ、覚えているよ。人間の女の子に抱かれて行ってしまったね』
『あの女の子、とても優しそうだった。きっと幸せに暮らしているよね?』
『きっとそうに違いないよ』
三毛の母猫はその時のことを思い出した。
小さな女の子が母親と一緒に来て、しばらく白い子猫と遊んだ後で、子猫を抱いて連れて行った。その女の子はどこかツキハに似ていた。
二匹は寄り添いながら再び眠りについた。
ある日、三毛の母猫だけに特別な御馳走が与えられた。子どもの猫も食べたそうにしたが、人間の女性がそれを認めなかった。母猫は食べ難そうにしながらもお腹一杯に御馳走を食べ、うとうと眠ってしまった。
キツイ消毒薬の臭いで三毛の母猫が気付いた時には、そこは自分が住んでいた小さな家ではなく、知らないバントラックの荷室にある柵の中だった。他にも猫や檻に入れられた犬がいた。みんな元気がなく、悲しい声を上げていた。
つづく