『せっかく病院ができたのなら、そんな酷いことをしないで、お母さんの病気を治してくれればいいのに』
『わたしも、最近できた病院に一度だけ連れて行って貰ったよ。だけど、病気を治すのは難しいらしいよ。でも、大して痛くないからね。まぁ、ご飯が食べ難くなってしまったけど』
三毛猫は舐めるのを止めて、ゆっくりと応えた。
『最後に生んだ子どもたち、今頃どうしているだろう?』
子どもの白黒の猫は頭を上げ、首を伸ばして窓の外を見た。
『どうしているだろうね』
三毛の母猫は再び丸くなった。
三毛の母猫は自分の子どもの多くが捨てられたことを、子どもの白黒の猫に教えていなかった。そして、大きくなった子どもが母となって子猫を生んだ後、孫に当たる子猫の多くが同じように連れて行かれても、それが捨てられることを意味するとは言えなかった。
そんなことを言っても娘を悲しませるだけで、何も解決しない。三毛の母猫は辛い思いを自分の胸の奥にしまっていた。
つづく