5.1 紙袋に入れられた小さな命 ③

『まだ連れて行かないで!まだ私が育てるから』

 母猫は思わず女性の手に爪を立ててしまった。

 

 女性は声を上げて痛がり、傷付いた手を引っ込めた。

 

 すると、今度は男性が怒り、段ボール箱から飛び出るぐらいの勢いで母猫の頭を右手で叩いた。

 

『痛い!痛い!痛い!』

 気を失うぐらいの痛みで、左耳が聞こえなくなっていた。

 

 それでも必死に堪えて抵抗したが、四匹の内の三匹が紙袋に入れられ、男性に連れて行かれてしまった。

 

 男性は子猫を入れた紙袋を手に持ち、軽トラックに乗り込んだ。母猫は残された一匹の子猫を気遣いながらも、連れて行かれた子猫の危機を感じ取り、軽トラックの後を追うことにした。

 

 

  つづく

 

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