「そうだよ。ウォータージャンプで見た時から、キミに恋をしてた」
ツキハはヒマリと視線を合わせ、告白した。
「そう言われても・・・」
ヒマリが視線を外した。
「分かってる。困らないで。私の方が恥ずかしいんだから」
ツキハもヒマリの顔から視線を外した。
「ごめん」
「私のことを好きじゃなくてもいいの。だけど、一つだけお願いがあるの」
ツキハが小さくお願いした。
「えっ、何?」
「ヒマリくんの胸の音、聴かせてくれない?」
「うん。いいよ。ツキハのお母さんの心臓なんだから」
「ありがとう」
ツキハは頭を下げ、ヒマリの胸に耳を付けた。やがてツキハから嗚咽が漏れて来て、ヒマリは両手で優しくツキハの頭を包んだ。
立ち止まっていたユウヤはロビーに行かず、静かに別館の方に引き返した。
ヒマリはツキハの頭を撫でながら、ロビーのガラス越しに外を眺めていた。
外には無数の星が輝いていたが月はどこにも見当たらない。その日は新月の夜だった。夜になっても陽は月の裏を照らし続けていて、陽の光を僅かでも反射して地上に届けてくれる存在が宙にはなかった。
つづく