「お父さん、きっと、お母さんがヒマリくんに会わせてくれたんだよ」
ツキハが涙を零しながら父に言った。
「ボクもそう思う。ツキハのお父さん、話してくれてありがとう。それにボクへの心臓の移植を認めてくれて、本当にありがとうございました」
ヒマリは笑顔だった。笑顔だったが頬は濡れていた。
「ヒマリ君、ありがとう。妻も空から喜んでいると思う」
ツキハの父が震えた声で応えた。
それから四人は、他の人から事故のことを聞かれても、心臓移植に関しては口外せず、既に解決済みで、偶然の出会いから新たな交流が始まっていることだけを話すことにした。
その日の夜はナイターでの練習はしなかった。
夕食後、ヒマリとツキハはロビーのソファーに座り、二人で話をしていた。ユウヤの姿はなかった。
「ヒマリくん、本当に運動神経がいいね。幾らトランポリンで2回宙返りができても、普通は雪の上であんなに簡単にできないよ」
もうツキハは泣いていなかった。
「うん。でも勉強は苦手だけど」
ヒマリも笑顔だった。
つづく