会議卓のあるホテルの一室で、ヒマリとユウヤは、並んだ二つのテーブルを挟んでツキハと向き合っていた。部屋にはツキハの父も居て、電話をしていた。
電話の相手はヒマリの家族だった。何かを謝罪し、何かの了承を得ていた。
ツキハの父は電話を切ると、三人を左右に分ける二つのテーブルの中間の位置に立った。
「黙っていたことで、余計に心配を掛けてしまった。本当にすまない」
ツキハの父は深々と頭を下げた。
それからツキハの父は椅子に腰を下ろし、ツキハやヒマリに伏せられていた理由の説明を始めた。
大雪の日、ツキハの父は事故を起こした。その相手がヒマリだった。大きな怪我はしていないようだったが、ヒマリは目を覚まさなかった。
ヒマリは生まれつき心臓が悪く、臓器提供を希望するレシピエントだった。事故でヒマリが運び込まれた病院には、病気で脳死となってしまったツキハの母も入院していた。そのツキハの母は臓器移植の意思を示すドナー登録をしており、検査をしてヒマリに適合すると分かった。
つづく