4.2 あの時の知られたくなかったこと ⑤

 遅めの昼食時間の後で一度整備が入り、公式練習が再開された。

 

 練習を重ねて中キッカーにも慣れ、三人それぞれが技の精度を上げていた。ヒマリはスキーを掴んだ状態で2回転ができるようになっていた。

 

 三人が中キッカーの待機列で待っていると、その後ろにハルトが来た。

 

「お前たち三人って随分と仲がいいな」

 後ろに並んだハルトが全く愛想のない表情で言った。

 

「そう見える。そうかも。ハルトたち三人も仲良しじゃない」

 ツキハが振り向き、ゴーグルをヘルメットに掛けて笑顔で答えた。

 

「ああ、俺たちは付き合いが長いからな。でも、ツキハ、お前は父親が起こした事故の相手と一緒に居ても、平気なんだな?」

 ハルトが淡々と話した。

 

「えっ?なんで?」

 ツキハの声は震えていた。

 

「おい、お前、いい加減にしろよ!」

 振り向きざまにユウヤが大きな声を上げた。

 

「事故の相手って何?」

 ヒマリはピンと来ていないようだった。

 

「なんだ。知らなかったのか、お前が遭った事故の加害者がツキハの父親だ。ウチのコーチはツキハの父親と付き合いが古いから、事故のことを知っていて、お昼に確認をしていた。それをさっき聞いた」

 ハルトは何の悪気もなくヒマリに答えた。

 

 

  つづく

 

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