「ないない。派手なのはスタイルだけ」
ツキハは笑顔で答えた。
いよいよ三人が中キッカーでジャンプをする番になった。
最初はツキハだった。ジャンプをすると手をクロスしてスキーを掴みながら、横回転で1回転半をして後ろ向きに着地した。技の練習1本目から難なくミュートグラブ540を決めた。
次はユウヤだった。ユウヤは前夜の練習で軸が不安定だったので無理に回転はしなかった。ジャンプ後に両足を広げるスプレッドイーグルから身体を折り曲げるコザックという連続技で着地した。
そして、ヒマリが飛ぶ順番になった。下の方でツキハとユウヤが見ている。
スタートしたヒマリは小さく屈んでスピードを出し、キッカーに向かって真っ直ぐ進んで来る。踏切に合わせて身体を伸ばし、身体を後方に反らして丸くなる。ゆっくり1回、2回とヒマリの身体は宙を舞った。空中でのキレイな姿勢はスローモーションを見ているようだった。
練習に来ていた多くの選手や役員、見学者がヒマリの後方2回宙返りを見てジュニアのレベルではないと驚いていた。その中にはヒマリたちとジュニアの優勝を争うことになる三人とそのコーチがいた。
つづく