「あいつらだけコーチが付いているのか、何かイイな!」
ふとユウヤが熱心な指導を受けている様子を見て呟いた。
「仕方がないよ。あのコーチの秘蔵っ子だし。私の知り合いなんて、みんな役員か選手のどっちかだから、誰も自分のことで手一杯で、相手なんかして貰えない」
ツキハがユウヤに応えた。
「さっきの練習、せめて体操教室のコーチが一人でも見てくれれば、技の難易度をもっと上げられたのに」
ユウヤは悔しそうだった。
「仕方がないよ。ボクたちが勝手に大会に参加するんだし」
ヒマリが窘めるように答えた。
「まぁ、そうだな。でも他の選手にもコーチが付いているように見えないな?」
納得したユウヤは、新たな疑問を口にした。
「ワールドカップやオリンピックじゃないから、コーチなんて付かないよ。プロスキーヤーって言っても、それだけじゃ生活が厳しいから、みんな他の仕事をしているの。ウチのお父さんも、夏はトレーナーとかスポーツショップの販売員とか色々してるよ」
その問いにツキハが答えた。
「そうなんだ。もっと派手な世界かと思ってた」
今度はヒマリが反応した。
つづく