ツキハは上着を脱いだだけで、まだスキーウェアのままだった。ユウヤがツキハの方に近付いても、ツキハはそれに気付かなかった。
「ツキハ、どうかしたの?」
ユウヤがツキハの傍に立って話し掛けた。
「えっ、あっ、ユウヤ!」
ツキハは突然声を掛けられて驚いたようだった。
「何か考え事?」
「えっ、まぁ・・・」
「もしかして、お父さんと喧嘩でもした?」
「お父さん?!喧嘩じゃないけど、ちょっと・・・」
「オレなんかいつも親と喧嘩だよ。全然、オレのことを分かってくれないし」
「へー、そうなんだ」
ツキハはユウヤに応えていたが、気持ちが入っていなかった。
ツキハは、父から聞いたことをヒマリとユウヤに話すべきか迷っていた。自分が事故のことを知らなかったように、二人とも事故の加害者が誰か知らないと思った。事故の被害者と加害者の娘、そして心臓移植者とドナーの娘、その事実を話して楽になりたいと思う一方で、今は話したくないという気持ちがあった。
ユウヤは何となくツキハの様子がオカシイことを察した。
つづく