4.1 あの子に話したあの頃の幼馴染 ②

 

 ツキハは上着を脱いだだけで、まだスキーウェアのままだった。ユウヤがツキハの方に近付いても、ツキハはそれに気付かなかった。

 

「ツキハ、どうかしたの?」

 ユウヤがツキハの傍に立って話し掛けた。

 

「えっ、あっ、ユウヤ!」

 ツキハは突然声を掛けられて驚いたようだった。

 

「何か考え事?」

 

「えっ、まぁ・・・」

 

「もしかして、お父さんと喧嘩でもした?」

 

「お父さん?!喧嘩じゃないけど、ちょっと・・・」

 

「オレなんかいつも親と喧嘩だよ。全然、オレのことを分かってくれないし」

 

「へー、そうなんだ」

 ツキハはユウヤに応えていたが、気持ちが入っていなかった。 

 

 ツキハは、父から聞いたことをヒマリとユウヤに話すべきか迷っていた。自分が事故のことを知らなかったように、二人とも事故の加害者が誰か知らないと思った。事故の被害者と加害者の娘、そして心臓移植者とドナーの娘、その事実を話して楽になりたいと思う一方で、今は話したくないという気持ちがあった。

 

 ユウヤは何となくツキハの様子がオカシイことを察した。

 

 

  つづく

 

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