4.1 あの子に話したあの頃の幼馴染 ①

 ホテルの本館と別館の中間辺りに男女の大浴場があった。その大浴場の暖簾をくぐり、ユウヤとヒマリが通路に出て来た。二人は通路に設置されている自動販売機に近寄って飲み物を選んだ。

 

「あっ、売り切れてる」

 お目当てが×印になっているのを見て、ユウヤがボソっと呟いた。

 

「ボクはこれ」

 ヒマリは迷わずにボタンを押した。

 

 ガッシャン!

 

 ヒマリは自動販売機の取り出し口に手を入れ、ペットボトルを手に取った。それはミルクティーだった。ヒマリはその場でペットボトルのキャップを開け、とても美味しそうに口に含んだ。

 

 

「相変わらずだな」

 

「ごめん、ボクだけ飲んじゃって」

 

「いいよ。じゃあ、オレはロビーにある自動販売機を見て来るよ」

 

「ボクも行こうか?」

 

「もう遅いから部屋に戻れよ。飲み終わったら歯を磨いて早く寝ること!」

 

「分ってる。そんなの。じゃあ、おやすみ」

 ヒマリはちょっと拗ねた返事をした。

 

「ああ、おやすみ」

 

 ヒマリは別館の方に進み、ユウヤは本館のロビーに向かってお互い背を向けて歩いた。

 

 ユウヤはロビーまで来ると、一番奥にあるソファーに座り、ガラス越しに外を眺めているツキハの姿を見つけた。

 

 

  つづく

 

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