ヒマリたち三人はナイターでの練習を終え、ホテルの各々の部屋に戻った。
ヒマリとユウヤはそれぞれ別の和室だったが、部屋に入ると同室の仲間から二人とも同じように手荒く迎えられた。同じ体操教室に通う仲間がスキーの大会に参加することをみんな喜んでいた。
一方、ツキハの部屋はツインの洋室だった。
ツキハが部屋に入ると、父が神妙な雰囲気で奥のソファーに座っていた。
「あれ?お父さん、今夜は大会役員で飲みながら打合せをしないの?」
ツキハはスキーウェアの上着を脱ぎながら父に尋ねた。
「ああ」
ツキハの父は少し考える仕草をし、
「実は、ツキハに話して置きたいことがあるんだ」
と静かに続けた。
「えっ、私に?」
ツキハはスキーウェアの上着をハンガーに掛け、父の向かいのソファーに座った。
「ああ。ヒマリくんのことでツキハに話して置きたいことがあるんだ」
ツキハの父は視線を落とし、目を合わせずにそう言った。
「大会のこと?ヒマリくんの参加に何か問題があるの?」
ツキハは怪訝な顔をした。
つづく