『うぅぅぅ、そうか。・・・じゃぁ、頼みがある』
オコジョは張っていた背中を丸め、今度は縋るように言った。
『頼み?』
小さなオコジョはヒマリに語った。
昔、この山には沢山の動物がいた。オコジョも大勢いた。だけど、人間がスキー場を作って山は削られ、森も殆どなくなった。多くの動物は他の山に逃げて行った。この山に棲む動物は少なく、自分たちオコジョも僅かになってしまった。今は人間に見つからないように隠れて暮らしている。
山には神様の木と呼ばれる昔から聳えるような大木があり、その周辺だけは森が残されて、スキー場名物の森林コースになっていた。その大木の傍には小さな鳥居もある。オコジョはその大木の周囲にある岩の隙間に棲んでいた。
スキー場ができてから冬になると大勢の人間が来るようになったが、やがて冬になって訪れる人間の数が減り始めた。それが何年も続いた。
これで安心して暮らせる。
そう思っていたら、もっと悪いことになろうとしていた。大木を切り倒し、森を無くすという話があるらしい。冬に人間が来なくなったので、代わりに夏に人間を呼ぶために、何か大きいものを作るらしい。
つづく