「う~~ん・・・。実は、ヒマリの左耳には不思議な声が聞こえるんだって」
ユウヤは迷いながらツキハに答えた。
「えっ、不思議な声?」
「ああ、動物や虫の声が聞こえるらしい。みんな信じないけど、オレは信じている」
「じゃあ、やっぱり何かいたのね?」
「そうだと思う」
「ウサギ?あっ、オコジョ!」
ツキハは思わず声を上げた。
「オコジョ?」
ユウヤが聞き返した。
「このスキー場って、昔はオコジョが住んでいたらしいの。今は姿を全然見なくなってしまったけど」
ツキハはそう答えた。
ヒマリはナイターの灯りが届かない森の中のゲレンデに入って行った。
『ねー、どこまで行くの?』
ヒマリが後ろからオコジョに声を掛けると、オコジョは止まった。
『そろそろいいか』
小さなオコジョは後ろを向き、ピョコっと立ち上がった。
『ボクに何か話があるの?』
ヒマリが尋ねた。
『あぁ。お前の秘密を内緒にしてやるから、言うことを聞いてよ』
オコジョは小さな胸を大きく張って偉そうに口を利いた。
『えっ?でも、内緒って言っても、キミたちの言葉はボクしか分からないよ』
つづく