「どうしたの?ヒマリくん」
離れた所から大きな声でツキハが呼び掛けた。
「なんでもない!」
ヒマリはしゃがんだまま振り向いて大きな声でツキハに応えた。
『ねぇ、話があるなら場所を変えようよ』
ヒマリがオコジョに言った。
『分かった。付いて来て』
オコジョはそう応えると森のある方へ走って行き、ヒマリも立ち上がった。
「ツキハ、ユウヤ、ちょっとトイレに行って来る」
ヒマリはそう言って、スキーでスケーティングをしながら後を追った。
白いオコジョの姿はゲレンデの雪に溶け込み、ヒマリ以外には見えないようだった。ツキハは森の方に向かうヒマリを見ていた。
「ユウヤくん、ヒマリくんって左耳が聞こえないんだよね?」
ツキハが近くにいたユウヤに尋ねた。
「そうだよ。どうして?」
「さっき、とても小さな鳴き声が聞こえたんだけど、ヒマリくんが左側で反応してたの。それに、しゃがんでいる時も左耳で何かを聞いているようだった」
ツキハは不可解に思えたヒマリの行動をユウヤに尋ねた。
「そっか。・・・」
ユウヤは迷った。
つづく