「ハル、またツキハと飛ぶの楽しみだね」
ミコトと呼ばれた少年が笑顔で言った。
「そうだな」
ハルトと呼ばれる少年は誰に対しても素っ気なかった。
その時、少女への指導を終えたコーチから引き上げるとの声が掛かった。
「ごめん、ツキハ、僕たちはもう行かなきゃ。宿が離れていて、夕飯もまだなんだ」
ミコトという少年がツキハにそう言うと、ハルトは軽く手を上げた。そして少年少女三人とコーチが去って行った。
ツキハの横にいたヒマリとユウヤはその様子を黙って見ていた。
「なぁツキハ、あの三人ってジュニア部門なんだよな?」
ユウヤは四人の背を目で追いながらツキハに尋ねた。
「ええ。ハルトとミコトくんはユウヤと同学年。ミスズは私やヒマリくんと同じで、一つ下」
ツキハがそっと答えた。
「大会を誘った時、人数が少ないとか、参加するだけで入賞とか言ってなかったか?」
ユウヤは静かに尋ねた。
「えっ、でも大丈夫。多分、あの三人みたいなの、他には出ないから。きっと」
ツキハは慌てつつ、自分を納得させるかのように答えた。
つづく