3.1 ライバル登場、俺はフリーでしかスキーしない ②

 その視線の先には少女と二人の少年がいて、コーチらしき男性が声を掛けていた。

 

 しっかりした身体つきの少女がスタートを切った。グングン加速して踏切と同時に身体を後方に反らして宙返りで一回転した。ただ、姿勢が崩れて尻餅をついてしまった。

 

「ミスズ、バックフリップができるようになったんだ」

 ツキハが声を上げた。

 

 続いてユウヤよりも背が高そうで体格も良い少年が後ろ向きとなってスタートした。

 

「あれ?後ろ向き」

 ヒマリが思わず驚きの声を漏らした。

 

「あれはスイッチっていう後ろ向きの滑り方」

 ツキハがそう言う間に少年は後ろ向きのまま飛んだ。

 

「えっ、そのまま飛ぶのかよ!」

 その様子を見てユウヤが驚いた。

 

 背が高い少年は横に1回転半して前向きで着地した。

 

「スゴイ!スイッチ540。でも、次の彼がジュニアの優勝候補」

 ツキハは驚きながらもスタート位置に視線を送った。

 

 次に細身の少年がスタートを切った。その助走は直線的ではなく、カーブを描いていた。そして踏み切った。

 

 少年はスキーを片手でクロスするように掴みながら、横方向に2回転しながら縦の軸をズラシて縦方向にも1回転した。そして何事もなかったようにキレイに着地した。

 

 

  つづく

 

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