湖沿いの道の先に赤い鉄柱の観覧車が見える。一台の車が交差点を右折し、観覧車の横を少し過ぎた所にある駐車場の入口に差し掛かって速度を落とした。
満車
その満車の看板を目にし、再び車は速度を上げて駐車場を通り過ぎた。
その車は観覧車からは大分離れ、半分近く埋まっている広い駐車場の奥の方に停まった。
助手席からベージュのクロッシェハットを被った女性が降りて来た。灼けつくような強い日差しが、その女性に降り注ぐ。
「あー、もう暑い。この日差しの中で夜までいるのね」
その女性は右手で真上にある太陽を遮りながら空を見上げた。
「本当。どうせ花火大会まで居るんだったら、もう少し遅く来ても良かったかも」
運転席側からも女性が降りて来て、直ぐに白系のキャペリンハットを被った。
「えー、せっかくの遊園地なんだから、オレは朝から来たかったよ」
後部座席から長身の男の子が降りて来て抗議した。ユウヤだった。
「母さんたちは涼しい所に居ていいよ」
反対側の後部座席からヒマリが降りて来てフォローした。
「それは賛成。うるさくないし。なあ、ヒマリ」
「えっ、ボクはユウヤみたいに、そんなひどいことは思わないよ」
ヒマリの髪の毛は日に照らされて白く光っている。
4人は荷物を手に、遊園地のエントランスに向かって駐車場を歩いていた。
つづく