春休みとは言え、平日なのでスキー場は空いていた。ゲレンデでは体操教室の子どもたちが班ごとに分かれてレッスンを受けていた。
ヒマリはスキーの初心者だったが、全体で滑りをチェックした班分けでソツなく滑れてしまい、中級班に振り分けられた。ユウヤは引率の先生やレッスンの講師よりも上手いレベルだったので、レッスンに参加せず、一人フリーで滑っていた。
ヒマリたちが数人でレッスンを受けている中、ヘルメットを被ったスキーヤーがスピードを出して現れた。雪煙が立つ。
「ヒマリ、頑張ってる?」
ゴーグルを上げ、ヘルメットに被せると、ユウヤの顔が覗いた。
「まあまあかな。割と滑れてる」
他のレッスン生と同じレンタルウェアのヒマリが答えた。
「じゃあ、レッスンが終わったら一緒に滑ろう」
ユウヤは大きな声でそう言うとゴーグルを掛け直し、滑り出して行った。
「ユウヤくん、カッコイイ!」
「ユウヤくんに教えて貰いたいよね」
ワザワザ聞こえるようにヒマリと同じ班の女の子が声を上げた。
つづく