ほのかに朝霧が立つ早朝のスキー場の駐車場に一台のバスが到着した。バスの正面窓のステッカーには、郊外の体操教室名と「春休みスキーキャンプ」と書かれている。
前夜に雪が降ったようで3月の後半ではあったが気温も低く、穏やかなスキー日和であった。
バスからはジャージ姿の男性を先頭に、雪で白く覆われた駐車場に次々と子どもたちが降りて来る。小学生から中学生ぐらいの男女混じった子どもたちと、引率らしき大人たちだった。
その中に割と背が高い男の子と髪の毛に白髪が混じった小さな男の子がいた。
「バスでさぁー、隣のヤツが気持ち悪くなって、オレまで気持ち悪くなったよ」
大げさなジェスチャーを交え、背の高い男の子が両腕を真上に大きく伸ばしながら大きな声で呟いた。
「それはヤダね」
小さい男の子が頷きながら小さくそう応えた。
「座席、帰りはお前の隣がいいな。コーチ、変えてくれないかな?」
そう言って、背の高い男の子は小さい子の頭を撫でた。
つづく