ユウヤとツキハは大きく声を上げて泣いた。泣きながらヒマリを見ると、胸の辺りに白い猫の尻尾が二つに分かれたようなものが置かれていた。
観客席の最前列にユウヤの姿があった。隣にはハルトとミコトがいる。ユウヤの胸にはツキハと同じネックレスがあった。ユウヤはネックレスの先に付いた白い尻尾のようなモノを握っていた。
「ヒマリ、見ているか。ツキハが飛ぶぞ」
ユウヤが空に向かって呟いた。
競技場の隣にある森の大木が薄っすらと光る。そして風が収まった。
ツキハはネックレスをウェアの中に入れ、スタート位置で構えた。
「ヒマリくん、お母さん、飛ぶよ!ヒマリくん、今でも大好きだよ」
そう言ってツキハはスタートを切った。
ツキハの身体は青空に向かって回転しながら大きく舞った。まるで白い子猫のように。誰よりも高く、誰よりも長く。それは空の上のヒマリにゆっくりと見て貰うために。
おわり