ヒマリが病室のベットに横たわっている。ベッドの横にはツキハとユウヤの姿があって、少し離れてヒマリの家族も見守っている。
「早く元気になれよ。また三人でスキーをしようぜ」
ユウヤがヒマリに声を掛けた。
「ありがとう。でも、難しいかな」
「そんなこと言わないで」
「ツキハ、せっかくお母さんの心臓を貰ったのに、ごめんね」
「だからそんなこと言わないで」
「そうだぞ、ヒマリ」
「でも、ボクはもう寿命なんだよ。二人には短く思えるかも知れないけど、ボクにとっては長い一生だった。楽しい思い出ばかりで幸せだったよ」
「何を言っているんだよ。しっかりしろよ!」
「ごめん。ユウヤ、ツキハ、二人とも大好きだよ」
ヒマリはゆっくりと目を閉じた。
病室の隅から三毛猫の霊が様子を見ていた。
『いい友だちを持ったね。人間のヒマリに猫のマリの命を継ぎ足しても、そんなに長くは生きられない。でも、精一杯、立派に生きたね。そろそろ一緒に行こうか?』
三毛猫の霊の横にヒマリと子猫のマリの霊が現れ、ユウヤとツキハを優しい目で眺めていた。そしてゆっくりと消えて行った。
つづく