「あっちも楽しかったけど、こっちかな。コノハは?」
「私はこっちも楽しくなって来たけれど、元の世界に戻りたい」
「そうだね。早く戻れると良いね」
アキは私に優しく返してくれました。
「コノハさん、明日は日金沢の鏡の泉に一緒に行ってみませんか?」
道澄さんがそう言って来ました。
その夜は、アキが見た夢の話や私が道澄さんと旅した出来事を、時が経つのも忘れて今この瞬間を惜しむように語り合いました。
翌朝、私は道澄さんやアキと日金沢の鏡の泉まで来ました。
「道澄さん、もしかしたらこれで最後ですか?」
「ええ。きっとそうなると思います」
「そうですか」
私はとても複雑な気持ちでした。
「コノハ、あなたが来てくれて本当に良かった。ありがとう」
「アキ、私もあなたに会えて良かった」
私たちは泣きながら別れの挨拶をしました。
「道澄さん、今までありがとうございました。とても尊敬しています」
「それはとても光栄です」
道澄さんは笑顔でした。
私はその笑顔がとても切なく、とても憎いと思いました。そう思ったら私は道澄さんに抱き付いていました。
「道澄さんは狡いです。私も輝虎様に負けないぐらい好きになってしまいました」
道澄さんは何も応えず、黙って私を胸で受け止めてくれました。
つづく