朝食を頂いて村を出る時、挨拶に来た近くのお寺の方に道澄さんが村の高台に人々が集えるお堂を建てたらどうかと提案していました。きっと私と会話した浅間山の大噴火のことを記憶していたのだと思います。
「高台のお堂か、それは良いな」
輝虎様は良い考えだと頷きました。
「道澄様が勧めるのであれば、私も協力しますよ」
千代女さんも輝虎様に続きました。
「道澄さん、私と話したことを覚えていたんですね」
「ええ。知識はありませんが、あなたと噴火のことを話した記憶は残っています。不思議ですね。自分の意識ではなかったのに」
道澄さんはそう言って笑っていました。
私たちは、千代女さんの案内で浅間山の中腹にある洞窟まで来ました。そこは以前の浅間山の噴火による溶岩流で作られた洞窟です。
輝虎様の家臣と唐沢玄蕃という方が先に洞窟に着いていて、松明を準備してくれていました。
「この先が龍蛇の巣窟と思われます。先に行って調べて来ましょうか?」
「どうします?」
唐沢玄蕃という人に続いて千代女さんが道澄さんに訊ねました。
「この闇の奥には無数の魔物がいるようです。先に進むのは危険でしょう。コノハさん、破魔の矢を出して貰えますか?」
道澄さんはそう答えました。
「はい。分かりました」
私は退魔の弓と破魔の矢を具現化しました。
つづく