「たとえ諏訪の神として習合された蛇神でも正すということですね?」
「ええ。そんな蛇神の噂が広まったら困りますしね。正すのも巫女の役目ですよ。それに、蛇退治のために道澄様は縁がある上杉を頼られるのでしょう?」
「流石は諏訪信仰を各地に広める歩き巫女の頭ですね。大した洞察です」
「まぁ洞察と言うよりも、目が覚めない子がいる家の、口が軽い男のお陰ですけどね」
そう言って千代女は笑いました。
「ご主人、女性に弱いから…」
その千代女の話を聞いて二郎が頭を抱えていました。
「上杉はあなたのご主人の仇では?」
「確かに上杉は川中島で死んだ夫の仇ですが、もう仇討ちなんて考えていません。敵味方なんて明日になれば分かりはしないから。道澄様を通じて上杉輝虎様と少し誼を通じたいと思いまして」
「なるほど、私に協力する理由は上杉輝虎殿との仲の取り持ちですか。巫女村のある祢津は、浅間山に近いですよね?」
「はい。浅間山の辺りは数年前まで武田と上杉で争っていましたが、今は真田が治めています。だから私には庭みたいな山ですよ。もしかして浅間山で蛇退治なんですか?」
つづく